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第5話 「嘘をつかない人が好き」と彼女は言った

last update publish date: 2026-08-17 10:25:59

朝のホームルームが始まる十分前、昨日までならクラスメイトの笑い声や机を引く音なんてほとんど意識したこともなかったのに、その日だけは周囲の音が急に遠くなったような気がして、私は床に落とした筆箱を拾うことさえ忘れたまま、隣の席に座っている篠宮君の顔を見つめていた。

「……もう一回言って」

「高梨は、どんな男が好きなんだ?」

聞き間違いではなかった。

しかも篠宮君は、私がどうして筆箱を落としたのかわからないという顔をしている。

いや、わかってほしい。

昨日の放課後、罰ゲーム告白で一悶着あって、そのあと二人で帰りながら少し妙な空気になった翌朝に、男子からいきなり「どんな男が好きなんだ」なんて聞かれて、平然としていられる女子高校生がどれくらいいるのだろう。

少なくとも私は無理だった。

「篠宮君って、こういうこと平気で聞く人だったっけ?」

「平気ではない」

「じゃあなんで聞くの」

「知りたいから」

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